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海とオートバイ
(内田正洋、えい文庫)


海とオートバイ「BMWボクサージャーナル」は、GSを買った頃は買って読んでいたけど、その後は、立ち読みだけで済ますようになった。「BMW最高!」という感じがどうにもアホらしくなってきたし、ユーザ紹介の記事ばっかりの印象があったためだが、「GSドリーミング、再び」という連載だけは気になっていた。これは、GSによるツーリング記事で、オートバイだけに閉じない視点がいいのだ。で、本書「海とオートバイ」は、その連載の文庫化になる。

改めて読んでみると、筆者のツーリングの視点は、海、縄文、民俗、地名といった、オートバイ以外の要素をたくさん含んでいる。中でも、筆者は日本におけるシーカヤックの第一人者とのことで、海からの視点が大きい。というか、オートバイより、この視点の方が大きいくらい。全体を通したモチーフは、オートバイとシーカヤックを重ね合わせた新たな観点から日本を見直すということになると思う。
特に、縄文、民俗、地名等は自分の興味と重なって、ついつい先に進んで、あっという間に読んでしまった。

が、正直、ちょっと、期待外れなところもあった。何というか、読後の印象があまり残らないのだ。読んだ端から、内容を忘れていく感じ。
何故なのかと思い、考えてみると、視点は様々なのだが、キーワードが散らかしてあるだけで、考察が一歩足らないからではないか。
例えば、この文章。

「それに、旅は人の生き方を変える。僕らの齢になっても、考え方を変えれば旅に出る時間は充分にある。それは指向の問題だ。冒険とは、可能性への信仰だけど、もっと言うならスポーツである。スポーツは冒険だ。また、冒険は旅であり旅もまた冒険。これらの関係は僕の中では不文律である。」(P.88)

心地よいキーワードが並んではいるが、結局、冒険とスポーツと旅の関係は、どうなっているんだろう。よく分からん。

「「あー何て素晴らしきかな」と、とみに強くオートバイの旅を思うこの頃。この自由なる乗り物と一緒だから生まれてくる肉体的、精神的感覚の素晴らしさ。おそらくこれは他の世界にはない、オートバイ特有の感覚。GSを経験してきたことで、はっきりと認識できた感覚。」(P.156)

こちらも何となく分かるような気はするが、でも、肉体的、精神的感覚の素晴らしさとは何だろう。その内実を言葉で表現することはできないのだろうか。
斎藤純のツーリング・ライフ(春秋社)には、「オートバイに乗ることによって五感の扉が開く。外側(自然)と内側(自我)の両方に目が開き、考えるきっかけを与えてくれる。要するにオートバイに乗るということは、心の扉を開くことに他ならないのだ。」という文章がある。
多分、「精神的感覚」について、似たような事態を言っているのだと思うが、やっぱり、斎藤純は、よく考えているし、文章もうまいんだなぁと、本書とは全然関係ないことを思ってしまった。

おっと、期待値が高かった分、文句も多くなった。が、GSに乗っていてキャンプ・ツーリングが好きな人ならば、読むしかないでしょ。

新規作成(08/3/15)

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