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法華経入門
(菅野博史、岩波新書)


法華経入門日本の霊性」を読んで、改めて、日本の宗教や思想への、法華経の影響の大きさを感じた。日本文化における法華経の位置付けは、西洋文化におけるギリシャ神話や聖書のような基層的なものなのかもしれない。で、法華経の基礎を知りたく思い、「法華経入門」を読んだ。

タイトルの通りの本なのだが、とにかく、読み易い。基本的な仏教用語には適度な説明があり、また、同じ用語に繰り返し説明があるのがいい。意味を忘れてしまった用語に出会っても、面倒で、ついつい、先に進んでしまい、理解が浅くなるということがない。説明は丁寧で、重要な用語に関しては、節を割り当てて説明しており、また、掘り下げ具合も丁度いい。簡単ながら、仏教の歴史も振り返っており、仏教入門としてもいいのではないか。

肝心の法華経自体については、今回、初めてお経のことを体系的に勉強したのだが、こんなに面白いものだとは知らなかった。
例えば、そのスケールの大きさ。釈尊が眉間から光を放つと一万八千の世界が照らされるとか、宝石で飾られた巨大な塔が大地から湧出してくるとか、途轍もない。膨大さを表現する数の表現も多いのだが、これも、すごい。「ガンジス河の砂の数」なんて序の口という感じ。その途方なさのイメージに関しては、ハリウッドの映画にも負けていない。というか、そういうイメージの原型は、大乗教典に出尽くしているのかもしれない。

思想面に関しては、誰でも仏になれるという一仏乗の思想、諸仏の空間的・時間的統一、特に、後者としての久遠の釈尊の思想、大慈悲心を表した地涌の菩薩の思想の3点が法華経の中心になるという。中でも、三つ目の地涌の菩薩に関係する次の文章が、自分が持った法華経の全体的な印象を集約しているように感じた。

「...大乗教典の根本思想は救われる者から救う者への転換を自覚し実践することであると考えている。」(P.181)

基本的な仏教の世界観の枠組みでは、修行により自身が涅槃に入ることと、衆生救済の利他行の実践により仏になることは別のことと考えられていたとのこと。自分が生きていくだけで精一杯であったろう世の中で、自分が救われるだけでなく、他者も救われなくてはならないという思想は革新的なものだったろうし、それが、日本の民衆や民俗、道徳に与えてきた影響は計り知れないだろう。また、これは、改めて、現代的なテーマでもある。

所々、淡々とした説明で少し退屈する部分もあったが、それは一部であり、全体的に見れば、法華経の基本を充分に理解できる良書だと思う。索引があれば、もっと、よかったのに。

新規作成(08/1/16)

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