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なぜハーレーだけが売れるのか
(水口健次、日経ビジネス人文庫)


なぜハーレーだけが売れるのかハーレー・ジャパンのマーケティングは成功事例として有名で、それを紹介しているビジネス書があるのは知っていたが、読んだことはなかった。で、先日、本屋でブラブラしていると、新刊の文庫「なぜハーレーだけが売れるのか」が、平積みにされているのを見掛けて、買ってみた。

読み始めると、文章は平易で、フォントも行間も大きく、あっという間に読んでしまったが、自分には物足りない内容だった。
ハーレーが実現している様々な取組み、キーワード的に言えばライフスタイル・マーケティングやらCRM等については、マーケティングを少し知っている人にとっては、目新しいものではない。まぁ、当り前のことばかり。
が、だからといって、大したことないじゃんということにはならない。どこの会社も、その当り前のことができなくて苦労しているのだ。
ハーレーは、どうやって、その当り前のことを実現してきたのか。何をやっているのかではなくて、どのようにやってきたのか。つまり、自分は、"What"ではなくて、"How"に興味があった。
が、本書の一番最後の最後に、こういう文章があって、脱力してしまったよ。

「この戦略を築き上げてきた、そのプロセス・・・・・それこそ、一番学んでほしいところですが、これが容易じゃないと思います。...奥井リーダーシップは、それほどに個性的なんです。つくづく思いました。それが、わたしの結論です。」

「奥井」とあるのは、ハーレー・ジャパンの社長なのだが、要は、これは、社長がすごいからできたのであって、普通の会社ではできませんと言っているのと同じじゃん。意味ねー。でも、そうじゃないでしょ。
ここで「個性的」と表現されている曖昧模糊としたものを分析・言語化して、他の会社にも応用できる要素を抽出するのが重要じゃないの?そうでなければ、インタビューした内容をまとめているだけじゃん。これからのマーケティングには「洞察力」が重要というようなことが他のページで書いてあるけど、人のことをいう前に、筆者が一番足りてないのではと感じてしまう。
加えて、「つくづく思いました」という小学生の感想文のような文章が、脱力感をますます強めるのであった...

というわけで、本書は、ハーレー・マーケティングの"How"に興味のある人には示唆はゼロ。
でも、"What"を知りたいという人ならば、コンパクトにまとまっていて悪くないと思う。
そういう意味では、ビジネスにどう生かすかというよりは、むしろ、ハーレーのオーナーが、自分がどのように取り扱われているのかを知るために読むのがいいかもしれない。

ところで、翻って、BMWのマーケティングはどうなのかと考えると、本書に書いてあるハーレーの"What"と比較すると、明らかに、ハーレーの方が上。例えば、ハーレーは、ユーザの満足度調査を継続的に行っているらしいが、自分は、ユーザとして、BMWにそんな調査をされたことは一度もない。
が、それよりも、ハーレーとBMWを比較して考えると、ハーレーのシェアがトップというのがよく分かる。同じ外国製オートバイでも、狙っているマーケットが全然違うのだ。

ハーレーの訴える主な価値というのは、ハーレーに乗っている自分が、世の中からどう見られるのかということに関係している。ユーザにとっては、ハーレーとは、洋服と一緒で、自分を表現するためのひとつの手段であり、オートバイの機能が重要なわけではない。
一方のBMWは、長距離が疲れないとか冒険心がかき立てられるといった、馬力や最高速度のような定量化できるスペックではないのだが、それはオートバイ自体の機能と言っていいだろう。そうなると、BMWの価値が訴求する対象というのは、走ることが趣味のオートバイ好きが中心になる。ちなみに、馬力や最高速度というスペックで訴求してきたのが国産オートバイ・メーカで、そのせいで、オートバイ市場そのものを縮小させてしまった。
で、ハーレーが訴求するセグメントとBMWのそれを比べると、明らかに前者の方が大きい。オートバイ好きの人口なんて限られているが、自分を格好よく表現したいというのは人間の基本的な欲求であって、そう考えると、ハーレーの潜在顧客は、一定の体力がある日本人全員とも言える。また、こう考えると、ハーレーに女性ユーザが多いのも理解できる。
そして、ハーレーのこの側面は、プロダクトとしてのハーレー・オートバイが持つブランド力が支えている。オートバイに興味がない人でも、イージーライダーを知っている人は多いだろう。そう考えると、マーケティングとプロダクトが理想的に組合わさったハーレーは本当に強いなと思う。
まっ、自分は、嗜好が違うので、ハーレーのユーザにはならないけどね。

新規作成(08/3/29)

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