ホーム > 本棚 > 長距離ライダーの憂鬱


長距離ライダーの憂鬱
(片岡義男、角川文庫)


長距離ライダーの憂鬱長距離ライダーの憂鬱」は、先日の北海道旅行の際に気になって、自宅に帰って来てから再読した本。

初めて読んだ当時は、あまり面白くないなぁと思ったが、再読しても、やっぱり、同様の感想だった。
で、何故なのかを考えてみると、それは、リアリティの無さにあるのだと思う。
実際にオートバイで走ると、都市部では顔が黒くなるとか、1日乗った後は頭が痒くて死にそうだとか、畑の中を走ると肥料のにおいがしてくるとか、そういった、しょうもない事実を感じることになる。が、本書では、そういうリアリティは全て捨象され、形式だけが残されている。しかも、それは、かなり徹底していて、意図的なもののようだ。
例えば、本書の第一部では、男女二人の主人公のうち、一方の女性が、下関から旭川まで走ることになる。そして、その過程のルートとして幾つかの描写があるのだが、そこから、実際の日本のどこかをイメージすることはない。なんとなく、阿蘇の辺りかなと思えるところはあったが、抽象的な架空のルートを走っている感じ。
また、土砂降りの中を走るシーンがあるのだが、そこでも、雨の中を走る鬱陶しさは感じられない。
一方、登場人物も、生活感がなく、女性主人公は、下関から旭川まで走る前は、仕事として、ある「プロジェクト」に関わっていたらしいが、その内容に関する文章もない。
そして、最後、主人公達は、地図という抽象空間の中の点として表現されて、本書は終わる。

一般的には、抽象もあるレベルを超えると、そこから、内実が浮き上がってくるものだが、自分には、そこまでは到達していないように思われた。

従って、本書は、オートバイのリアリティについて気にならない人、例えば、オートバイに興味はあるけど乗ったことの無い人、または、オートバイに乗ることよりも、いじったり眺めたりすることが好きな人に向いているのではないか。文章や構成、会話の内容はスタイリッシュで格好いい。片岡義男が好きな人がいるのは分かる気がする。

話は変わるが、本書を読んで、斉藤純のオートバイ系の小説は、片岡義男に影響を受けているのだなぁと改めて思った。

新規作成(08/3/25)

ツーリング | キャンプ場ガイド | BMW R1150GS | 本棚 | その他旅行記 | 過去の雑記 | リンク
(c) Copyright teruyuki 2005-