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タイマグラ通信
(澄川嘉彦、ハヤチネ叢書)


タイマグラ通信タイマグラというのは岩手県の地名で、遠野の北、早池峰山の東に位置している。自分は、とあるホームページで、タイマグラのことを知ったのだが、まづ、その名前に魅せられた。日本語とは思えない独特の響き。やはり、「林の奥の道」という意味のアイヌ語らしい。北東北には、アイヌ語由来の地名が多い。

で、本書は、「タイマグラばあちゃん」という映画の監督が、関係者へ送った季節毎の通信を書籍に纏めたもの。
「タイマグラばあちゃん」というのは、タイマグラに住む、あるお婆ちゃんの日常を追いかけたドキュメンタリー映画なのだが、メジャーな映画ではないので、ロードショーというようなものではなく、「上映会」というレベルで公開されているようで、残念ながら、自分は、まだ見る機会がない。
が、「タイマグラ通信」に関しては、以前、盛岡の本屋で見かけたことがあり、その時は、買おうかどうか迷って、結局、見送ったのだが、その後、ずっと気になっていた。そんな背景の中、今年のゴールデンウィークの東北ツーリングで遠野に立ち寄り、帰宅後、地図を見ていて、タイマグラがすぐ近くだったことに気がつき、改めて、手に入れて読んでみた。

本人にとっては何でもない日常なんだろうけど、自然と一体になって生きているばあちゃんの生活は本当に素晴らしいし、逞しいと思う。山頭火に「へうへうとして水を味ふ」という句があるが、まさに、それを地で行っている。ここにこそ、人間の本当の生き方があるのかもしれないなぁなどと思ってしまう。

中でも、印象に残ったのが、ばあちゃんが亡くなった後の以下の文章。日本人が、西洋やイスラムでのような絶対的な一神教を持つ必要がなかったことが分かる気がする。

「私はばあちゃんの死を終わりと感じることができないようです。肉体の死はやってきたのかもしれません。しかし、タイマグラに居ると、まわりの自然の中にばあちゃんの生命を感じるのです。マイナス20度まで冷え込む日が続くと、厳しい寒さの中で凍みホドをつくっていたばあちゃんを思い出します。...枝いっぱいに花芽をつけたコブシの木を見ても、薪にするために伐り倒されたカラマツの切り株を見てもばあちゃんを感じます。...繰り返す季節の中で、その季節ごとにばあちゃんの営みがありました。今その存在が消えても、何もかわることなく繰り返される自然の営みの中にばあちゃんを確かに感じるのです。」

タイマグラにはキャンプ場もあるので、今年の夏は、是非、行ってみて、この本を、もう一度、読み返してみたい。

新規作成(07/6/30)

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