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旅する哲学
(アラン・ド・ボトン、集英社)


旅する哲学久しぶりに、「旅する哲学」で、本を最後まで読んでしまうのがもったいないと思った。
一番最初にこの本を見掛けたのは、六本木ヒルズ近くの本屋でだった。この店は、最近、流行の本屋らしく、新刊や文庫本、雑誌といった従来のカテゴリだけに合わせた配置ではなく、テーマに沿った棚割りをしている。
で、この本は、確か、オートバイ雑誌の近くにあったと思うのだが、最近、本棚が一杯なので、その時は、買うまでには至らなかった。
が、その後、ずっと、気になっていて、BRUTUSのニッポン観光特集にあった「ニッポンを旅したくなる本」というオススメ本の中に見掛けて、それで、どうしても読みたくなって、手に入れた。

結論から言うと、勘は当たっていて、旅好きには、素晴らしい本だと思う。タイトルには、哲学とあるが、そんな難解な話もなく、旅に関するエッセイ集といった方が合っている。
本書の魅力は、旅先で何となく感じていたその美点や不満点、旅をより充実したものにするための対処法等、様々な話題が整理され、明晰に語られているところにあると思う。
駅や空港の詩情、人は何故エキゾチックなものに惹かれるのか、情報溢れる現代において「事実」というものにどう対処すべきか、人は何故自然に触れたがるのか、旅の記憶が褪せないようにするためにはどうすべきなのか等々の話題がテーマとされ、章毎に書かれている。中でも、最もインパクトがあるのが、一番最初の章にあったりする。

「デ・ゼッサントは、けっきょく、逆説的な立場に身を置くことになった。美術館で選ばれたオランダのイメージを見ているときのほうが、十六個の荷物と召使い二人を連れてオランダの田園そのものを旅行しているときよりも、より多くオランダにいると−言い換えれば、オランダ文化のなかで自分が愛する要素と、より強烈に触れ合っていると−実感できるという逆説のなかに。」

デ・ゼッサントとは、引用されている、ユイスマンスの「さかしま」という小説の主人公。実際に旅に出ると、自分が求めていたもの全てが実現するわけではない。天気が悪かったり、景色が思ったより退屈だったり、トラブルだってある。それよりも、近所の美術館で現地を描いた絵を見たり、目的地に関する本を読んで空想をしている方が、よっぽど、旅で求めていたものが手に入るのではないか?何故、旅に出るのか?
2章以降が、その答とも言えるが、本来、それは、自分で探すものだろう。

また、構成として素晴らしいのは、各テーマ毎に、それを象徴する文学者や画家等の人物を題材にして、語られているいるところ。というのも、この手のエッセイは、読んでいる最中は盛り上がるのだが、読み終わった後は、意外と、さっぱり、内容を忘れてしまうことが多い。が、人物がテーマにされていると、そういうこともなく、旅先で、ふと思い出すことができるような気がする。そういう意味でも、自分の旅の方法を思い直すのに、示唆を与えてくれると思う。

ところで、この本を書いたのはイギリスの哲学者なのだが、日本人による、同じ意匠の文章を、是非、読んでみたい。帯には、池内紀の「羨ましいような旅の本である。同好の士と出くわし、ゾクゾクするほど嬉しくなった。」というコメントがあるが、感動しているばかりでなく、そういうものを書いて下さい!!

新規作成(07/10/5)

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