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ソクラテス以前以後
(F.M.コーンフォード、岩波文庫)


ソクラテス以前以後ソクラテス以前以後」は、ギリシャ哲学の入門書を読みたくて手に取った本。

薄いので、あっという間に読んでしまったが、これが、非常に分かり易い。ギリシャ思想を、ソクラテス以前の自然学→ソクラテス→プラトン→アリストテレスの順序で説明しているのだが、各々の思想の継承されている部分と異なっている部分が明確にされているので、ギリシャ思想全体を、ひとつのストーリーの下に理解することできる。また、本書は、元々、大学の公開講座の講義内容なので、記述も平易で読み易く、オススメだと思う。

ギリシャ哲学史の叙述がそこから始まるイオニアの自然学者達は、機械論的な宇宙生成論を考案したが、その発想は、今ある世界がこのようにある理由が、現在に至るまでの過去に存在すると考え、その始元を求めて探求を進めた。ところが、ソクラテスは、関心そのものを、自然から人間自身へと転回する。そして、自己自身と正しい生き方の知識、人生の最終的な目的を求め、探求の対象を、始元から終極へと移行させた。
次の世代のプラトンは、ソクラテスから受け継いだ終極的な目標をイデアとして実体化し、イデアを具現する事物に対して上位に位置付けた。また、ピュタゴラス派からは、自然と人間の両方を含む包括的な説明原理の存在を学び、そこから、イデアを、人間だけではなく、自然をも含めたより根本的な原理へと拡張する。
ところが、アリストテレスは、そのイデアを地上へと引き降ろし、自然物の中に埋め込まれたイデアは、その目指すべき目標とされ、また動力因ともされたのであった...

ソクラテスは書き物を残さなかったが、彼により創始された、終極的な目的を求めるという「希求切望の原理」は、プラトンとアリストテレスの哲学の中に一貫して存在した。また、その原理がキリスト教道徳と整合していたために中世のヨーロッパに受け入れられ、ギリシャ哲学がキリスト教神学と融合されたことを考えても、ソクラテスが西洋思想の方向付けに、いかに大きな影響を持ったかが分かる。

また、現代の自然科学に関しても、ギリシャ思想の中に、その根本的な発想を見ることができる。

「われわれが見たり触れたりするすべての事物は数を表現ないし具現している。この測定可能な量という局面のもとで、自然的世界は知られ、理解される。...この発見、すなわち物理科学を解く鍵は数学のうちにあるという発見は、哲学的思索の幼年期に始まって、いまもなお科学の指導原理としての役割を果たしているところの天才的直観のひとつである。」(P.93)
「だが古代の科学は、無からは何ものも生じないという原則を固く守って、移り変わる現象を映す幕の背後に何らか恒常的で不滅な「存在」を要請した。」(P.38)

二つ目の引用は、エネルギー保存則のような何らかの保存則へとつながる考え方になる。現在の物理学のように精密に定式化されているわけではないが、その発想は変わらない。

ホワイトヘッドか誰かが、ヨーロッパの哲学はプラトンの著作に付けられた一連の注釈だとかなんとか言っていたと思うのだが、さもありなんという感じ。

雑記より移行(07/2/28)

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