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大往生の島
(佐野眞一、文春文庫)


大往生の島3月の四国ツーリングの際に訪れた沖家室島のことを調べていて、「大往生の島」に行き当たった。

本書は、沖家室島で生き生きと暮らしている老人達が、日本の高齢化社会の問題に対するヒントを与えるのではないかという観点から、沖家室島とその本島というべき周防大島のことを書いている。
周防大島は、瀬戸内海に浮かぶ大きな島で、行政的には、山口県に属している。著者は、元々、宮本常一のルポルタージュを書くために、その生家がある周防大島で取材し、その一環として沖家室島を訪ねた。で、その最中に、沖家室島に住む老人達に感銘を受け本書を書いたらしい。

自分にとって、高齢化社会の問題というのは、まだ、切実感がないし、基本的な知識もないので、その点から、本書に関して言えることはない。
ただ、独立心を持って暮らしている島の老人達は素晴らしいと思うし、また、沖家室島の歴史や風土、今の現実を知るにはいい本だと思う。中でも、島民の海洋民的性格は興味深い。
漁業が生活の中心だったこの島の人々は、魚を追ってどこまでも行き、どこであろうと住み着いてしまう。その結果として、明治以後、日本ばかりでなく、台湾、朝鮮、中国の青島、ハワイにまで分村を作っている。こんな「田舎」の島民が、ごく普通に、グローバルな精神を持っているのである。この島では「人は土地に根づくのではなく、種に根づく」と言われてきたそうだ。やっぱり、狩猟民は格好いいなぁ。
そして、老人達の生き生きと自立した生活が、良質な食生活に基づく健康だけによるのではなく、実は、そんな海洋民としての進取の気性や子供たちが島外に出ていくのが当然の環境が育てた自主性と相互扶助の精神という風土に根ざすところが大きいのを知ると、人間の奥ゆかしさのようなものを実感する。

自分は、結局、この島には3時間もいなかったけど、本書を読むと、また、行ってみたくなるなぁ。

新規作成(07/4/30)

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